ワイン あれこれ
工業的に作られる化合物が環境に及ぼす悪影響が顕著になるに従い、化学肥料や除草剤などを使わずに、
持続可能な生態を守ろうと、自然の中に存在する生き物由来の物質や、鉱物を利用してぶどうを
育てようとする生産者が次第に増えてきました。
さらに、地球と月や天体の位置関係が生き物の成長に及ぼす影響を体系的にまとめ、ナチュラルプレパレーション
(自然界の調合物)と呼ぶ特別な肥料のみを少量使用し、耕作、剪定、収穫などの作業を行う農法がビオディナミ農法
と呼ばれ、20世紀初頭にドイツのルドルフ・シュタイナーが始めました。
これをぶどう栽培に応用し、造られるワインがビオディナミワインと呼ばれます。しかし中には敢て公的な認定を
受けない生産者もあり、彼らの造るワインを、我々は"ビオディナミ未認定"と呼んでいます。
■ ビオディナミワイン(未認定を含む)は、こちら
ワイン造りのプロセスで、動物由来の物質(例えば豚や牛のゼラチン、魚の浮き袋由来のにかわ、
卵白や牛乳たんぱく質など)を使い、ワインの中のたんぱく質、イーストや浮遊物質などを吸着除去し、
澄んだワインを造ることがあります。
こういう動物由来の物質を使わずに、粘土(ベントナイトやカオリンなど)を用いたり、時間を掛けて
濁りを沈殿させて造られるのがヴィーガンワインです。
ヴィーガンの認証を受けているワインには裏ラベルにヴィーガン協会(The Vegan Society、英国)やICEA(Instituto per la Certificazione Etica e Ambientale、イタリア)など認証機関の
ロゴが印刷されています。しかし中には認定を受けていないワインもあり、このようなワインを我々は"ヴィーガン未認定"と呼んでいます。
■ ヴィーガンワイン(未認定を含む)は、こちら
ぶどうが発酵する過程で、酵母によって微量の亜硫酸ガス(SO2)は発生します。これとは別に、通常ワインの発酵の過程でバクテリアの繁殖を抑えたり、保存中のワインの酸化を抑える目的で、亜硫酸(便宜上気体を指すSO2で呼ぶことがあります)が一般的に添加されますが、オーガニックワインでは通常のワインよりも使用量が少なく抑えられています。
さらに一歩進めて、頭痛やアレルギー反応などを懸念し、亜硫酸を全く添加せずに造られるワインが亜硫酸無添加(SO2フリー)ワインと呼ばれます。
実際には、タンクを清浄に保ち、空気との接触を最小限に抑えてワインの酸化を防ぐなどの工夫が行われ、SO2を添加しなくても安定した品質のワインが造られるようになってきています。
ご購入後は、品質を保持して頂くために、冷暗所に保存のうえ、開栓後はできるだけ早くお召し上がり下さい。
■ 亜硫酸無添加(SO2フリー)ワインは、こちら
PIWI(ピーヴィ)とはカビ耐性ぶどう品種を意味するドイツ語のpilzwiderstandsfähige Rebsortenの略。
ブドウの病気(ウドンコ病、ベト病など)の原因となる菌に対して耐性を持つべく、1990年代初頭から
主としてドイツの研究所で開発されてきたブドウ品種の総称です。実験室内で遺伝子操作で生み出され
るのではなく、フィールドで人工交配によって作られます。現在ではヨーロッパを中心に各地で開発が進んでおり、
いくつかの例を挙げると、レゲント(赤)、メルロ・コルス(赤)、ブロンナー(白)などがあります。
(Ref:https://piwi-international.de/en/)
PIWIの出現によって、従来ぶどうをウドンコ病、ベト病などから守るために使われてきたボルドー液
(硫酸銅の水溶液)などの農薬の使用を大幅に減らすことができ、その結果環境の持続可能性を高めること
が期待されています。
■ PIWIで造られたワインは、こちら
ガヴィ(Gavi)は1998年にD.O.C.G.に昇格したピエモンテ州の白ワイン。
ワイン名のガヴィは主要な産地である市の名前、ガヴィから付けられました。
ガヴィを造るぶどう種がコルテーゼ(Cortese)。フレッシュで切れ味のよい酸味を
持つ辛口の白ワインで、スティルワインのほかに、微発泡(frizzante)と発泡(spumante)
も造られます。
■ ガヴィのワインは、こちら
シェリー(スペイン語ではヘレス)はスペイン南部アンダルシア地方で造られる
アルコール強化され、食前食後に好まれることが多いワインです。
厳密には、カディス(Cadiz)県のエル・プエルト・デ・サンタマリア
(El Puerto de Santa Maria)、サンルカール・デ・バラメーダ(Sanlucar de Barrameda)、
ヘレス・デ・ラ・フロンテラ(Jerez de la Frontera)の3つの町で形作られる三角地帯で
造られるアルコール強化ワインのみがシェリーと呼ぶことを許されます。
ヘレスより少し内陸部に入ったモンティーリャ・モリレス(Montilla-Moriles)や
マラガ(Málaga)でも、シェリーと同じ製法で造られ、これらの地域の名前で呼ばれる
名高いワインがあり、これらを総称して『シェリータイプ』と呼ばれます。シェリータイプの
個性は、使用されるぶどう種と、この土地のアルバリサ(albariza)と呼ばれる
炭酸カルシウム、粘土、珪藻土からなる、極めて保水性に富む白い土壌によるところ
が大きいと考えられています。
使用されるぶどう品種はパロミノ(Palomino)、ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez)、
モスカテル(Moscatel)の3種に限られるが、醸造方法、熟成方法により、異なった
タイプのワインになります。パロミノ種のアルコール発酵後、ワイン表面にフロール(Flor)
と呼ばれる酵母膜が形成され、これがシェリー独特の味わいを造り出します。
樽に移されたシェリーは『ソレラ(Solera)』という独特の方法で熟成されます。熟成期間が短い
ワインを最上に置き、少しずつ熟成期間の長いワインの入った樽を、順々に下に置き、
最下の最も熟成期間の長い樽(ソレラ)から出荷する。ソレラから減った分は、
一段上の樽のワインで補充し、その樽は更に一段上の樽のワインで補充します。この
プロセスを繰り返し、熟成3,4年から数十年を経て出荷されるものもあります。
こうして造られるシェリーには、色、香り、味わい、料理との合わせ方などに大変広い幅が
生まれます。
多くのシェリータイプのお酒では醸造プロセスでぶどう由来のスピリッツなどを用いて
酒精強化され、それぞれに定められた一定の濃度を保たれます。しかし、モンティーリャ・モリレス
では、大陸性の乾燥と高温下で育つペドロ・ヒメネス種が非常に高い糖度で摘まれ、
酒精強化をしなくとも高いアルコール度のワインになります。
『いくつかのタイプ』
フィノ(Fino): フロールで表面を覆われたまま熟成されるので、酸化熟成が抑制され、
淡い麦わら色、シャープでデリケートなアーモンドのような香り、ドライで軽い口
当たりのワインになります。アルコール強化時に、アルコール度数18%を超えないよう
に調整されます。
アルコール度:15-18%
アモンティリャード(Amontillado): フィノの段階を経て、第二段階の酸化熟成をしたワイン。
琥珀色で、フロール由来のキレのあるスパイシーな香が含まれる辛口です。
アルコール度:16-22%
オロロソ(Oloroso): 酸化熟成した辛口ワイン。元来辛口で、琥珀色からマホガニー色。クルミやナッツ
を思わせる華やかな香りが特徴です。スペイン語でにおいを意味する”オロール”に由来する高い香りを持
ちます。フルボディで充実度の高いワイン。 アルコール度:17-22%
クリーム(Cream): オロロソをベースにして造られ、濃いマホガニー色のビノ・ヘネロソ・デ・リコール。
木樽やレーズンを思わせる深みのある香り。ビロードのような口当たりで、甘くフルボディです。
アルコール度: 15.5-22%
ペドロ・ヒメネス(Pedro Ximénez): 濃いマホガニー色で干しぶどうが持つ深い香りのワイン。ソフトでビロードの
ような口当たり。最も甘みが強く、豊かでバランスのとれたワイン。ペドロ・ヒメネス種の
ぶどうを天日に干して干しぶどうにしたものから造られます。
アルコール度:15-22%
■ シェリータイプ酒は、こちら
北イタリア、ロンバルディア州のフランチャコルタ(Franciacorta)で造られ、イタリアでも有名な、DOCGがつく高品質のスパークリングワイン。
フランスのシャンパーニュと同様、瓶内二次発酵法で造られますが、シャンパーニュと比較して酸が控えめなので、このワインが持つソフトで調和がとれた味わいが日本食にもよくマッチします。
寿司とフランチャコルタとのすばらしい出会いについては、『ワイン王国』2010年11月号にも詳しく語られています。
リパッソ(Ripasso)とは、「元に戻す」という意味で、発酵の終わったアマローネ(Amarone)の樽に残った澱(オリ)の上に、普通のヴァルポリチェラ(Valpolicella、 イタリア・ヴェローナ州のライトボディの赤ワインの一種)を入れ、更に2週間あまり発酵させる醸造方法です。
これによって、アマローネの力強さと黒糖カラメルの風味が加わり、通常の造り方では到底達し得ないレベルにまでワインの品質を高める効果があります。
こうして造られたワインは、手間がかかっている割には価格が手頃で、非常にコストパフォーマンスの優れたワインとして人気があります。
■ リパッソ製法のワインは、こちら
アマローネ(Amarone)はイタリア・ヴェネト州に伝わる伝統的な陰干し製法「アパッシメント」によって作られる、とても貴重なワインです。一房ずつ選りすぐったぶどうを、3ヶ月近く独特の「すのこ」に並べて陰干しにすることにより、エキスを濃縮させ糖度の高まったところでアルコール発酵、そして木樽で熟成させます。こうして、アルコール濃度が高く、リコリス、タバコ、イチジクなどの風味を感じる、リッチでボリュームに富んだ濃厚な赤ワインが生み出されます。
ビンテージから4年後にようやくワインは瓶詰めされ、さらに瓶の中で年を追うごとに熟成を重ねます。こうして、丹念に熟成されたワインはコルクを抜くと、気品に力強さと優美さが加わった華麗なワインが出現します。 他の追随を許さない恵まれた環境、伝統に裏打ちされた職人芸の賜物なのです。
■ アマローネ製法のワインは、こちら
ランブルスコ(Lambrusco)とはイタリアでも主にイタリア中部のエミリア・ロマーニャ州で栽培されるぶどう種、またこのぶどうから造られる
微発泡性赤ワインのことです。軽く、香り良く、アルコール度数は11%と低いので、野外でのバーベキューやあるいは軽い昼食でも楽しめます。
■ ランブルスコのワインは、こちら
ポルトガル北部・ドウロ川上流(アルト・ドウロ地区)で造られるポートワインは、約20種類もの黒ぶどうを混ぜて造られます。 ぶどうが発酵している間に何度か糖度を測定し、醸造責任者の理想の糖度になった時、スピリッツ(ブランデー)を添加し発酵を止め、樽詰めします。アルト・ドウロ地区で樽詰めされたワインは越年後、ドウロ川河口のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイアの町まで運ばれ、そこで貯蔵・熟成されます。 貯蔵の終わったワインはメーカーによってブレンドされ、それぞれの製品 として出荷されます。
ワインの積み出し(出荷)がドウロ川河口のヴィラ・ノヴァ・デ・ガイア対岸のポルト市から行われるため、ポルト(Porto)=ポート(Port)という名がついたという由来があります。
■ ポートワインは、こちら
「アンフォラ」とは、古代ワインなど様々な液体や物品を運ぶために用いられた粘土の素焼きの甕の総称で、
取っ手が両方(amphi)にある容器(pherein)という意味のギリシャ語に由来するラテン語。
アンフォラを使ったワイン造りは、紀元前6000年頃ジョージアで始まったと言われ、
その後もヨーロッパ各地でこの容器を使ったワイン造りは細々と続けられていたようですが、
この伝統的な技術が人の介在を少なくしたいと考える自然派ワインの造り手に再認識され、
特に2010年以降イタリア北部、フリウリで現代のワイン造りに応用され始め、
その後世界各地に広まってきています。
土中に埋められたアンフォラ内は自然と低温に保たれるため、ワイン発酵と熟成がゆっくりと進行していきます。
素焼きの粘土の壁を通してワインに微量の酸素が供給されるので、木樽で造られたワインのようにまろやかで
優しい味わいが加わります。 また沈殿物が細い甕の底に溜る利点を生かして、清澄工程を省くことにも
つながります。
■ アンフォラワインは、こちら
ペットナットとは、Pétillant Naturel(ペティアン・ナチュレル)の略称で、
『弱発泡で自然のまま』という意味。 フランスに起源を持つスパークリングワイン
の製法の一つで、その特徴は、野生酵母を用いて醗酵させ、醗酵が完全に終わる手前の
まだ糖分が残っている状態で瓶詰めした後、瓶内で醗酵を進めます。
スパークリングワインほどの強いガス圧はなく、またろ過をしないので、澱が残り濁っていることが多く、
素朴な味わいが特徴です。
■ ペットナットワインは、こちら
ヴィーニョヴェルデ(Vinho Verde)とは一般にポルトガル最北部、大西洋寄りの広いミーニョ(Minho)地方で造られる、緑を感じさせる薄い黄色を帯びた特有の微発泡白ワインを指します。 ぶどうの完熟する約一週間前に収穫するため、アルコール度数が低く、ほのかな炭酸が感じられる清涼感あふれる非常にさわやかな風味になります。 名前は、直訳すると緑のワインですが若いワインを意味します。
ヴィーニョヴェルデとなるぶどうの一種ロウレイロ(Loureiro)からは、スプマンテも造られ、またヴィーニャオ(Vinhao)というぶどうからは赤の微発泡のものも造られます。
■ ヴィーニョヴェルデのワインは、こちら
ワインに使われる亜硫酸(sulfite)は硫黄を燃やして発生するガス、あるいは粉末のメタ重亜硫酸カリなどの形で、
中世以来世界中のワインに酸化防止剤として一般的に使われています。亜硫酸はワインの発酵前に酵母以外の有害な微生物の活動を抑えたり、ワインの酸化に関与する酵素の機能を阻害する役目を果たします。また、オリ引きの際や、瓶詰め後における酸化を防ぐことも大切な役割です。
さて、ワインに使われる亜硫酸の量は各国の食品管轄省庁の各認証機関による安全基準が定められていて、通常ほんの少し使用されるのが一般的です。
日本の食品衛生法における亜硫酸の基準では350ppmであることが規定されています。オーガニックワインでは、
赤ワインでは100ppm以下、また白とロゼワインでは150ppm以下、スパークリングワインでは155ppmと定められています(参照 欧州委員会)
が、生産者によってはさらに低いレベルの亜硫酸を使用しています。
一方喘息やかゆみなど、亜硫酸に対するアレルギー反応を持つ人達のためには、これを含まないことが望ましく、我々の販売するワインにも「亜硫酸無添加(SO2フリー)」のものが増えてきています。 私共では、これら様々なオーガニックワインの品質を保つために、輸入、貯蔵、出荷などのあらゆる段階で厳密な温度管理を実施しております。
ポリフェノール(polyphonol)とは、芳香環に水酸基を2つ以上もつフェノール類化合物の総称で、赤ワインの風味を造る上で最も重要な物質でしょう。ワインには数百種類にも上るポリフェノールが含まれるのですが、そのほとんどが種皮に含まれることが、赤ワインに多く含まれる理由です。ポリフェノールは化学構造の特徴から、フラボノイドと非フラボノイドという2つのグループに分類され、前者にはアントシアニンやカテキン、タンニンなどが含まれます。 ポリフェノール分子同士が結合し大きな分子になると、渋みがまろやかさに変わります。 また、赤色色素のアントシアニンは酸化すると褐色に変わりますが、タンニンと結合したものは酸化しにくく、安定した色を生み出します。
さて、タンニンですが、ワインに渋みや味の深みを与える重要な成分ですが、一つの化合物ではなく、一群の複雑な物質を指します。糖と没食子酸と結合し、水の中で分解しやすい加水分解性タンニンと、フラボノイドがいくつも縮合して大きな分子になった縮合型タンニンに分かれます。 しかしタンニンは、他の分子と結合して大きくなりワインに溶けきれずに沈殿することがある一方、酸性の環境下で小さい分子に分解される可能性もあり非常に複雑な性質を持っています。
レスベラトロール(resveratrol)
ポリフェノールの一種で、これを発見したのは日本の科学者高岡道夫氏です。当初ぶどう自身が持つ抗菌性物質として研究されていたのですが、1990年代後半に皮膚がんの抑制に効果があるという報告があり、その後の研究で抗動脈硬化作用、肥満抑制などの効果が期待されています。
■ 澱(オリ):
ワインの中に時々フワフワ浮かぶ物体、オリが発生していることがあります。
これは、天然のぶどう果汁が発酵して生じる“酒石・酵母カス・ぶどうカス”で、オリが発生することはむしろ自然ともいえる現象です。オリを発生させないようにする唯一の方法に「ろ過」がありますが、この方法は“やりすぎる”とオリだけでなく、ワインの様々な旨味成分をも取り除いてしまうという欠点もあります。
それでも、オリによるクレームが発生しない様わざわざろ過して出荷する醸造元が多い中、本来のスタイルを楽しんでいただこうと近年ではろ過をせず、出来たそのままのワインを出荷したり、風味に影響が出ない様ほんの少しだけろ過をして出荷する醸造元も増えつつあります。
弊社ではその様な醸造元と多く取引をし、お客様にワイン本来の姿を楽しんでいただきたいと願っています。
オリが出ているからと言って嫌がっていては品質の良いワインを自ら拒否する様なものです。
是非、デキャンティングなどで対応してお楽しみいただきたいと思います。
ただし、ワインがはっきりと白濁して透明度がなくなってしまっている場合は、ワイン自体が変質している可能性が高いと言えるでしょう。
■ 酒石酸(Tartaric Acid):
瓶の底、あるいはワインを開栓した時にコルク栓の下面に時々ワインシュタインと呼ばれる白くキラキラ光るガラスの様な結晶が見られる場合があります。(赤ワインではまれに色素と一緒に沈殿することがあります。)
これは酒石酸とカリウムからできる酒石酸カリの結晶で、品質的に優れたワインに現れます。特に、ドイツでは「ワインのダイアモンド」と呼んで大変喜ばれます。また、ワインシュタインは白い粉の様に出たり、白く発泡スチロールの様に出たりもします。特に後者はドイツのアウスレーゼ以上の高級ワインにしばしばよく現れます。
これらは、ぶどうに由来する天然物で体には無害ですので、グラスに注ぐ時はワイン瓶の底に残すようにして注ぐか、デカンターに移して召し上がってください。
■ カビ
キャップシールを取るとコルクの上に“黒っぽいカビ”が付着していることがあります。何だか気持ち悪く、もう飲めないのでは…?とよくご質問を受けます。
このカビは、湿度の高い地下貯蔵庫で長く熟成させたワインのコルクの上部に発生したり、まれにワインのびん詰め時のこぼれや、コルク栓からのワインのにじみによってコルクに発生する現象です。
でも、このカビは空気にふれる部分に繁殖するだけでワインの中には成育しません。
特にフランスやドイツ、イタリアなどを訪れ、本格的なワイン蔵をご覧になられた方ならご承知のことと思いますが、彼らはワイン蔵がカビに覆われていることを誇りにしています。
つまり、カビが発生する様な状態がワインには最適であるということをよく知っているのです。
ですから、開栓する際に布巾などできれいに拭き取れば何らワインの品質に悪影響を与えるものではありません。むしろ、よい状態で保管されていた証拠とも言えるでしょう。
ワインの糖分をアルコールに変えるのは、酵母(イースト)の働きです。酵母は、細菌の一種で小さく肉眼では見えません。
実際ワインの発酵に関わるのは、単一の酵母ではなく、初期段階ではクロエッケラ属、カンジダ属などで、アルコール濃度が上がるに従ってクリプトコッカス属、ピキア属が取って代わり、さらにアルコール濃度が4-6%に上がるとアルコールの存在下でも活動できるサッカロミセス・セレヴィシエが最後のプロセスを引き継ぎます。さらにアルコール度数が12%ぐらいに達すると、アルコール発酵が止まります。
こうして糖分が完全にアルコールに分解されると、辛口ワインになります。発酵を途中で止めるとアルコール度数が低く保たれて、甘口ワインができあがります。また発酵プロセスでは糖分がアルコールに変わるだけではなく、同時に400種もの揮発性化合物が生み出され、ワインそれぞれの風味を作り出すのです。
赤ワインと、ある種の白ワインでは、マロラクティック発酵(malolactic fermentation)と呼ばれる二次発酵を行います。ぶどう由来の主な有機酸は、酒石酸とリンゴ酸ですが、このうちリンゴ酸(malic acid)が乳酸菌によって乳酸(lactic acid)と二酸化炭素に分解されるプロセスがマロラクティック発酵です。
この結果酸味が弱くなり、まろやかな味になると同時に、乳酸エチルエステル、アセトイン、ジアセチルなどの芳香成分が生成します。この中の乳酸エチルエステルは、ワインのいわゆる「ボディ」を強めます。
ワインに香りを与えているのは揮発性物質です。 もともとぶどうが持っていたものもありますが、発酵や熟成過程で二次的に発生するものの方が、はるかに多く400種以上も見つかっています。
スミレの香りは、β-イオノン(ionone)。 イチゴはフラネオール(furaneol)。バラはフェネチルアルコール(phenethyl alcohol)など化学的には芳香環と呼ばれるいわゆる"亀の甲"に水酸基(-OH)がついたものが多いです。
オーク樽で熟成させたワインに加わる、バニラの香りは、アルデヒド類の一種バニリン(vanillin)。 最も重要なオーク風味にはβ-メチル-γ-オクタラクトン(オークラクトンとも呼ばれる)があります。オークラクトン単独ではココナッツの香りですが、ワインの中では強いオークの香りにもなります。貴腐ワインの甘く香ばしいナッツの香りの元となるソトロン(sotolon)もラクトン類の一つです。 クローブ(丁子)のような香りの成分はオイゲノール(eugenol)で、揮発性フェノールの代表です。また焦げたような匂いを与える成分にグアイアコール(guaiacol)があります。
世界的なワインの生産地の一つボルドーはフランス西部にあり、大西洋に面する港町ボルドーに流れ込むドルドーニュ(Dordogne)、ガロンヌ(Garonne)、ジロンヌ(Gironde)の3つの川沿いに広がる地域で、早くからワイン造りが行われていました。
ボルドーの街は紀元前400年頃にケルト人によって建設され、紀元前100年頃からはローマ帝国の支配下にありました。4世紀頃には、すでにブルゴーニュと並び銘醸地として知られていました。12世紀中頃からおよそ300年間イングランド領という時代があり、その後オランダやハンザ同盟との取引、西インド諸島との交易などで繁栄し、18世紀までにボルドー市街には多くの優れた建築物が作られ、現在この市街地が世界遺産に登録されています。
さてボルドーで造られるワインは、ほぼ全てがA.O.Cの格付けを持ち、大きく5つの地区に分類されます。メドック&グラーブ(Médoc & Graves)地区は、ガロンヌ川とジロンド川の左岸に広がり、ボルドーを代表する力強く複雑で香りの余韻が長く残る秀逸な赤ワインを生み出します。 サン・テミリオン、ポムロール、フロンサック(Saint-Émilion, Pomerol,Fronsac)地区はドルドーニュ川右岸の丘陵地帯に広がり、優雅でビロードのような味わいのメルロが多く造られます。またコート(Côtes)地区は、3本の川が交差する地域の右岸に広がる丘陵に点在し、香り高く飲み心地の良い赤ワインが多く造られます。アントル・ドゥ・メール(Entre-Deux-Mers)地区はガロンヌとドルドーニュの2つの大きな川に挟まれ、辛口白ワインが多く生産されます。そして、ソーテルヌ&バルザック(Sauternes&Barsac)地区では、ガロンヌとシロン(Ciron)の2つの川の温度差によって年間90日以上発生するといわれる霧が原因で生み出される貴腐菌がこの地方独特の甘口の貴腐ワインを生み出します。
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