"イタリアのワイン"
フランスについで、世界第二のワイン生産量を誇るイタリア、北はスイスとオーストリアと国境を接し、南といえば、シシリア島からはわずか100kmほどでアフリカに届くというように、国土が南北に長く気候風土が多様なので、400種類以上のぶどうが栽培され多種多様なワインが造られています。 ローマ帝国の拡大に伴いワインはヨーロッパ各地にひろがったのですが、もともとその古代ローマにワインをもたらしたのは、古代のギリシャ人やエトルリア人達で、かれらはワイン栽培に適した今のイタリア南部の地域を、ワインを意味するエノトリア(OenotriaあるいはEnotria)と呼んでいました。
私共のワインの中にもこの名をもつワイン(Antica Enotria)があります。 北から各地にひろがる主な生産地を見ていきましょう。
北イタリアのピエモンテ(Piemonte)州はその名が山の麓を意味し、その山岳性の冷涼な気候に育つネッビオーロ(Nebbiolo)種から造られ、イタリアを代表する、渋みと酸味をもつ力強い赤ワインが、バローロ(Barolo)とバルバレスコ(Barbaresco)です。 これらのワインは果実実があり、力強く濃厚で、共に数年の熟成を経てスムーズかつスミレやバラ、スパイスなど複雑な香りを醸し出します。 またこの中のアルバ村(Alba)では、若々しい味の赤ワインがバルベーラ(Barbera)種から造られます。
一方、辛口白ワインで青リンゴのようなさわやかな香りが持ち味のガヴィ(Gavi)は、コルテーゼ(Cortese)というぶどうから作られます。甘口の白ワインとしては、モスカト・ビアンコ種を使ったアスティ(Asti)が有名で、その中の発泡性のものはアスティ・スプマンテと呼ばれます。 国内生産量では、イタリア20州中で6位なのですが、品質の高さを示すDOCあるいは、さらに上のDOCGクラスのワインが最も多く造られるのがこのピエモント州です。
同じく北イタリアで、半島の東に位置するヴェネト(Veneto)州を代表するのがフルーティーな白ワインのソアヴェ(Soave)と繊細な赤ワインのヴァルポリチェッラ(Valpolicella)。 ヴェネト州の州都はヴェローナ(Verona)。「ロミオとジュリエット」の舞台となった街です。 この町では、毎年3月にイタリアを代表する大規模なワイン見本市Vinitalyが開かれ、私共もその年のワインの選定に参加します。
中部イタリアに位置し、フィレンツェを州都とするトスカーナ(Toscana)州は、イタリアでもっともポピュラーな品種・サンジョヴェーゼの名醸地で、このぶどうから造られ、世界で最も有名な銘柄のひとつキャンティ(Chianti)や、ブルネッロ・ディ・モンタルチーノ(Brunello di Montalcino)などが造られています。 比較的アルコール度高く、タンニンががありつつ軽い味わいのワイン。 1970年代ごろからは、ボル ゲリ地方ではフランスのカベルネ・ソーヴィニョンがつくられるようになり、新たなトスカーナの名醸地として、世界に名を知られるようになっています。
アブルッツォ(Abruzzo)州はイタリア中部に位置し、西は2000m級の山々が連なるアペニン山脈、東はアドリア海に挟まれ、州の6割を山岳地帯が占めています。粘土石灰質の土壌が多く、この州を代表する白ぶどう種はトレッビアーノ・ダブルッツォ(Trebbiano d'Aburuzzo)。 また、モンテプルチアーノ(Montepulciano)からは、力強い赤ワインが造られます。 アブルッツォ州にある都市キエティ(Chieti)は、遣欧少年使節団の派遣をキリシタン大名達に勧め、これを実行したイエズス会巡察師アレッサンドロ・ヴァリニャーノ(Alessandro Valignano)の故郷でもあります。
"かかと"に位置するプーリア(Puglia)州ではフェニキアの植民地時代からワイン造りが行われています。ここは台地と平野からなり、夏は暑く、代表的な地方原産のぶどうネグロアマーロ(Negroamaro)やプリミティーヴォ(Primitivo)など力強い赤ワインが造られます。
シチリア(Sicilia)島は溶岩質の土壌で、土地の60%以上が丘陵を構成し、ぶどう栽培に適した気候に恵まれています。 代表的な白ワインには、カタラット(Catarratto) やインゾリア(Inzolia)、また赤ワインとしてはネロ・ダヴォラ(Nero d'Avola)などがあります。
この島の最も有名なDOCワインは、酒精強化ワインの一つマルサラ(Marsala)です。 ワインにプランデーや濃縮果汁を加えたもので、食前や食後のほかお菓子や料理にも使われます。
イタリア産発泡性(Sparkling)ワイン
イタリア産スパークリングワインは、品質の高さと手頃な価格で、世界中で年々人気が高まってきています。 大きく分類すると、泡立ちの強いスプマンテ(Spumante)、それよりも穏やかな泡立ちのフリザンテ(Frizzante)があります。この中で、スプマンテは、その甘さにより7段階に分類され、辛口から順に、ブルット・ナチュール(Brut Nature)、エクストラ・ブルット(Extra Brut)、ブルット(Brut)、エクストラ・ドライ(Extra Dry)、セッコ(Secco) セミ・セッコ(Semi Secco)、ドルチェ(Dolce)と呼ばれます。また主にエミリア・ロマーニャ州で多く造られる微発泡の赤ランブルスコ(Lambrusco)も、少し冷やして飲むとほのかな甘さの中にフレッシュな爽快感が楽しめます。
赤ワイン用ぶどう
白ワイン用ぶどう